WITHOUT A SOUND チャッピーのブログ

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ポールマッカートニー「エジプト・ステーション」レビュー

 

2018年9月7日(金)にポール・マッカートニーの新譜が発売になりました。
前作「NEW」から5年ぶりらしい。ついこの間、発売したような感覚だけど、もう5年も経ってしまったらしい。時の流れとは、凄まじく速い。

ポールも現在、76歳と本格的にジジイになってきてしまった。
そんな中「出してくれるだけありがたい」とは言うものの、やはり世紀の大傑作を期待してしまっている自分がいるのも、事実。

さて、今回のアルバムは、どんな仕上がりになっていたのだろうか?
データ的なことは今後、雑誌とかネットとかでどんどん出てくるんだろうから、発売した直後で日本語のウィキペディアもできてない状況だからこそ、純粋な感想を書いていこうと思います。まぁ、ざっとね。

(今回はApple Musicで聴きました)




総評

いきなり総評なんですけど、まず一回目聴いた時の感想。

結構チャラいなぁと思ってしまいました。音圧も結構高めだったからですね。
前作「NEW」も音圧高めだったと思うんだけど、今作の場合、落ち着いた曲が多かったので、ミックスとのギャップがちょっと目立った感じだったかな。まぁこれは先行シングル「I don't know / come on to me」が出た時に抱いた感想とおなじですね、それがアルバム全体としてもやはりそうだったね。でも、決してそれが合ってないわけじゃなくて、工夫を凝らしたアレンジと調和していた。
今作のプロデューサーはグレッグ・カースティンというめちゃ売れっ子のプロデューサーで、その手腕が現代的な感性でポールの持ち味をうまく引き出したと思う。

でも所謂、流行りの音って10年後、20年後にはあっという間に古くなっちゃうよね。
後世に残るスターピースを作るという意識がポールから薄れてしまっていったみたいで、ちょっと寂しくなってしまった。

というわけで、なんだかんだで発売してから毎日聴いてたわけだけど。段々、初見の頃と違う感想を抱き始めてきた。

耳が慣れてきて、曲を聴き込むたびに、その洗練された曲たちに驚くばかり。
ポールの曲のクオリティって、どんなに年を取っても、クオリティ、レベル、ハードルが絶対下には下がらない。こういった曲を今でも作り続けるって、他のどんな76歳にもできない(例えばロジャーダルトリーの新譜とかは酷いものだった…気がする)それってやはり底なしの貪欲さというか、好奇心であって、若手売れっ子プロデューサーを起用するのも(カニエともコラボすんのも)その表れだと思う。

去年の来日公演のときはもうポールの声も限界かなと思いもしたが、こうして、ちゃんと今のポールにあった音域の曲であればバッチリ、ソウルフルな歌声を聴かせてくれる(まだアルバム2、3枚はイケそう)。この「エジプト・ステーション」には洗練されたメロディ、衰えない歌声、今でもファンを楽しませ続けてくれるサプライズが確かにあった、感服。マスターピースを残すつもりが、ポールにはもう無いのではと言ったが、それは大きな間違い。彼は未来じゃなくて、今をしっかりと見据えている。傷跡を残すんじゃなくて、今まさに爆発することにシフトしたのでは。ポールももう歳だからね。ちょっと悲しいけれど、それは最も正しい選択。結果的にそれが駄作として歴史から薄れていってしまっても、現代のベストが打ち出せたら、それが一番価値のあることなのだ。

彼は現代における最も偉大なエンターテイナーで、それが結果的に歴史に残るアーティストになるということを見事に表したアルバムが「エジプト・ステーション」なのではないか。

間違いなく、傑作である。

好きな曲でいうと、特に「Back In Brazil」がお気に入り